特に目立つところもなく、どこにでもいるような学生──皆見悟流(みなみ さとる)。
 
家庭環境こそ多少複雑だったが、悟流曰く「普通の家庭、なんてないし」と言い切り、

自分の境遇を特にどうとは捕らえていなかった。
 
思っていることと言えば、自分が凡庸である自覚と、

変化のない退屈とも言える日常を嫌っていないという認識だけだった。

 だがその平凡な願いは、実は高望みだったと思い知らされる。
 学園に通うバスで時折見かける女学生、西島澪(にしじま みお)。

 いやがうえにも人目を引きつけるその美貌に加え、自然に滲み出る清楚な仕草、

落ち着いた振る舞い、品のある言葉遣い。
 
その全てが平凡からは大きく離れていて、異端で、魅力的で、華やかだった。

 自然と悟流も、彼女を見かけることが密かな楽しみになる。けれど、それ以上は望んでいなかった。

それは、後ろ向きな気持ちで諦めているのではなく、この距離こそが正しいと確信しての……

いわば手が届かないからこそ安心して眺められる高嶺の花であった。
 しかしその高嶺の花は、ただ美しいだけではなかった。 その花は、いやらしいまでに艶めいていた。

 一息つこうと屋上へ向かった悟流は、偶然澪と出くわす。 二人の間を、無言と風が通りすぎる。

 その時、澪のスカートがふわりと浮き上がり、何にも遮られていない秘部が悟流の目前で露わになった。
 
──彼女は、下着を穿いていなかった。

 声も出せず、澪は慌ててその場を立ち去る。 悟流は、今見た光景が衝撃的すぎて、身動きすら叶わなかった。

(な、なんで……穿いてないんだ!?)

麗しの彼女の、信じられない痴態。
 だがそれを前にしても悟流は、「きっと何か理由があるに違いない」と思いこみ、

破廉恥な想像を頭の片隅に追いやる。

 しかし消しきれないその想像は、時間を増すごとに悟流の思考を侵蝕していく。

 その、刺激的だがあやふやな状態に耐えきれず、真相を確かめるべく再び屋上に足を向ける悟流。

そこで再び、澪と出会った。

 会えたものの、こっちの名前すら知らない相手に、どう話を切り出せばいいか悟流は悩んだ。

 けれどその悩みは、彼女の行動によって、解消された。

 あの時と同じように、悟流の前に澪の秘部がさらけ出される。

  しかし、あの時と違うのは──。

「ねえ、見えた? それとも……見たかった?」

 くるりと回り、その勢いでスカートがめくれあがる。
 
──そう。澪は、まぎれもない自分だけの意志で、淫らな痴態を悟流に見せつけたのだった。

悟流は戸惑いつつ嫌悪しつつ、しかしどこか惹かれていく自分を否定しきれなかった。

悟流を誘う非日常への扉が、今、大きく開いたのだった。

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